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この論文は、海底の堆積岩及び火成岩によって伝搬される超音波の速度及び減衰量の測定について述べたものである。岩石の物理特性(間隙率及び透過率)の計測、及び地質学的研究(薄片、X線回折、及び走査型電子顕微鏡)が組み合わされ、岩石が受けている地質学的変化過程の研究調査が行われている。
この論文の目的は、低い圧力条件(実効圧力;10MPa)に於ける音響特性に対する微小亀裂の影響、並びに微小亀裂の影響が最小となる高い圧力(実効圧力;40MPa)に於ける、海底岩石の音響的、岩石物理学的、地質学的諸特性の間の関係を研究することである。実験室に於ける圧縮波(粗密波)及び勇断波(ねじれ波)の速度及び減衰の測定は、10MPa〜40MPaの範囲の実効的圧力(Pore−Fluid Pressure;間隙流体圧力より低い圧力に制限されている)を有し、蒸留−イオン除去された純水あるいは塩水溶液(1l当たり26,4gのNaClの溶液)の何れかで完全に飽和した状態の、21個の海底堆積岩及び火成岩について行われた。測定周波数は、0.5MHz〜1MHzの範囲であった。Winker及びPlonaにより1982年に考案された”パルスー反響”方式が、速度と減衰量(QualityFactor)を測定するために使用された。
研究対象とされた岩石の組み合わせは、14個の砂岩及びSiltyStone(沈泥岩;Silt=砂より小さく、粘土より粗い質の沈積土----訳者注)及び7個の火成岩(主として、玄武岩)より構成されたものであった。これらの岩石の間隙率及び透過率は、それぞれ0%〜約20%、及び0mD〜約5mDの範囲に変化している。研磨された薄片の岩石学的研究、X線回折分析、及び走査型電子顕微鏡による観測の結果、“砂岩のほとんどのものは、かなりの量の粘土を含有している[例えば;カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4、岩石中の長石が分解して生じた残留粘土----訳者注)、及び緑泥石]他、色々な破片から成り立っていることが明らかとなった。
砂岩は、普通程度乃至粗目の粒状の石英を含む砂岩や沈泥質の砂岩から構成されている。砂岩に関しては、その硬結及び圧密化の程度は非常に大幅にばらついている。ある種のものは、非常に強固に結合されているものの脆い。又一方別のものでは、強く結合されていて、ドリルに対しても非常に堅くなっている。炭酸塩並びに石英は、非常に堅い岩石の場合の膠結材質となっている。もろい岩石の場合は、異物が入っていないかあるいは粘土が結合材となっている。Silty Sandstone(シルト;沈泥質砂岩)の基質(堆積岩の間を埋める細かい物質----訳者注)は、炭酸塩、粘土、及び赤鉄鉱から構成されている。石英及び長石が、粒状の構成成分の主体となっている。ある場合に於いては、特に沈泥質砂岩に於いては、化石の破片が岩石の粒状構成の主体となっている。緑泥岩、カオリナイト、そしてある場合に於いては、雲母も、粘土で非常に多く見られる成分である。石膏(CaS04 2H2O;硫酸塩鉱物の一種----訳者注)は、沈泥質砂岩に於ける組成/結合成分となっていることもある。研究対象とした火成岩の多くは、Ophitic(斜長石結晶が輝石結晶内に含まれている状態の----訳者注)玄武岩である。それ以外の鉱石としては、火成集塊岩、僅かに変成した花崗岩、及び粒状玄武岩(輝緑岩)がある。主要な組成成分は、斜長石(NaCaを主成分とする長石の一種)輝石(カルシウム、鉄、マグネシウムに富む珪酸塩鉱物)、及び椴攪石(MgFe,SiO4)である。----[構成成分の補足説明----訳者注]輝石の緑泥石化現象は、これらの岩石で普通に見られる現象である。
火成岩に於ける苦鉄質鉱物(例えば;輝石)の緑泥石化現象のような変質過程により、速度は約30%低下し(同様な構成で変質していない火成岩の速度に比較して)、劇的に減衰量を増加させることになる。又、砂岩の間隙率及び粘土成分は、速度及びQuality Factorを低下させる(減衰量を増加させる)最も重要なファクターとなることも明らかである。これらの研究の成果として“モデル作成目的のために使用される速度及びQuality Factorの値は、通常推定される値よりも低くしなければならない”ことが明らかとなった。
実験方法の詳細
研究対象とした岩石は全て、浅い試錘孔

 

 

 

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